スパイスの品質向上にむけて~プロジェクトの開始~
2000年、マリオさんは農村開発プロジェクトを始めました。
地域の農家を300件程組織して、生産管理から営業のコンサルティングまでを行う会社RAPID(農村アグリビジネス&多年作物戦略開発株式会社)を立ち上げたのです。
マリオさん
「この地方はかつて、スリランカでももっとも良質のスパイスを産出する地域として知られていましたが、最近では巨大な卸売青果市場ができ、国内の農業生産流通の中心地としても知られるようになりました。ベンガル湾の一角にある地理的メリットを生かして、地域の農業生産の付加価値を高めていきたい。この地方をベンガル湾諸国のスパイス供給地にしたいのです。この地域を世界に開き、我々の農家に目を開かせたいのです。」
マリオさんの挑戦1
スパイスに付加価値をつける
マリオさんは、
「スリランカのスパイス農家は、粗放的な農業を続けていれば、他の農業国との価格競争に振り回されてしまいます。どんなに新しい付加価値の加工品を作ろうとしても、農産物の品質を含む付加価値が上がらなければ意味がない」と言います。
そこで、RAPIDプロジェクトではこれまでスリランカでの行われてきた粗放的な栽培を改め、農薬や化学肥料なども極力使用せず、土壌や自然が本来備えた力を最大限引き出すような栽培方法に体系化して地域の農業全体の底上げを図ろうとしています。
マリオさんの挑戦2
スパイス農家へ品質向上のためのテキスト配布
シンハリ語の手作りテキスト栽培技術や品質管理技術の普及の方法については、国営機関が、これまで出版したようなテキストでは理論的過ぎて、実践には役立ちません。そこで、地域の農業に応じた実践的な内容のテキストを製作しました。文字だけでの難しいものではなく、マンガやイラストで分かりやすいシンハリ語の物を作りました。
マリオさんの挑戦3
スパイス農家への融資体制を整える
マリオさんは、品質や栽培方法の改善に際して資材が必要な場合は、農家の責任で銀行でお金を借りて返済できるような仕組みを作りました。銀行の融資希望の際はRAPIDが融資を希望する農家の事業計画を査定、助言し、銀行への橋渡し役を担いました。銀行は担保がなければ融資しません。
マリオさんは、アジア開発銀行に支援を求め、もし農家が返済不能になった場合、不良債権の大部分をアジア開発銀行が肩代わりしてくれることになりました。アジア開発銀行は当初、民間企業が行うプロジェクトへの支援には消極的でしたが、RAPIDが成功し、農家に利益をもたらし始めたら、その株を農家に譲渡し、最終的には実質的に農家が経営権の多数を占める事業にする構想なので、公共性が高いと判断されたのでした。農家の土地などの資産も担保に勘定されます。融資には、RAPIDが農家に連帯して保証します。
マリオさんの挑戦4
スパイス農家の意識を高める~顔の見える流通を学ぶ~
「農家は今、自分の作る作物に何が求められいるか世の中を広く見渡して自分の目と感覚で見て、自分で考え、実践していくという姿勢を身につけなければなりません。」とマリオさんは言います。
農家の一番の課題になるのは、農家自身の考え方です。これまで農家にとっては、せいぜい地元の卸売り市場か仲買人あたりまでが世の中の全てで、それ以外は想像できないことでした。
農家が生産だけでなく、中間流通を省いて、消費者に直接販売出来るようにしようというRAPIDプロジェクトを通して、「顔の見える関係」の流通を学びました。これまでとは違う流通を学び、自分の手で発展を掴むチャンスを得ようとしています。
マリオさんの願い
「農家は自分の世界を広げて、変わっていかなくてはいけないという意志を持って欲しい」とマリオさんは願っています。農家は新しい技術を学び運用し、経営上の考え方も学ぶことに加え、その基礎となる農家自身の考え方を身に付ける必要があるのです。第3世界ショップは、マリオさんやスパイス農家を応援し続けていきます。
RAPIDプロジェクトで作られた農作物は、カレーの壷・スリカレー・チャイに使われています。
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