第3世界ショップの設立
月刊Press Alternative1997年8月号
スタッフ物語より抜粋
■仕事づくりを目的とした継続的な援助
PAニュースの次に手掛けた事業が第3世界ショップだった。当時、南北格差に付いては、多くの人達が問題意識をもって運動を起こしていた。しかしその運動の多くは、お金や毛布を贈るといった、どちらかというと一時的な支援が中心で、本当の意味での支援というには問題が有るのではと思っていた。
片岡が銀行を退社し、リハビリのつもりで数カ月アジアやヨーロッパを歩いた。そのヨーロッパの旅先ノルウエーで見かけた第3世界ショップ運動の支援の方法は、物を「あげる」というのではなく、発展途上国の仕事作りを目的にする、継続的な援助だった。また、イギリスにある第3世界ショップのオックスファムに寄ったところ、同じコーヒーを飲むなら第3世界ショップのコーヒーを飲むという人達の声を聞き、対等で継続性があるところが気に入ったと帰ってきた。
しかし、自分で第3世界ショップをやることは考えておらず、PAを訪ねて来る人に対しこの第3世界ショップ運動の素晴らしさを語り、誰彼なく「第3世界ショップをやってみない?」と声をかけていた。しかし、誰に声をかけてもいい運動ですね、とは言うが始める人はいない。やはり、途上国との仕事は大変と言うことをビジネス感覚のある人ならすぐ察するのだろう。
■仕事のないPA
PAを設立してから数カ月たってもPAニュースの購読料と後わずかの雑収入しかなく、最初にみんなで用意をした500万の資本金が給料という形で段々減って行くのがみえるようだった。誰もやらない第3世界ショップも気になっていた片岡は、仕事のない自分達で第3世界ショップをやってみようじゃないかと提案。
その日から第3世界ショップに付いての情報集めと輸入の勉強に入った。
■アフリカフェ
先ずは、片岡が旅行に行った時に買ってきた「アフリカフェ」というコーヒーを飲んでみた。これなら味も価格も大丈夫そう、と判断し、このコーヒーを製品化していたオランダの第3世界ショップからアフリカフェのサンプルをとりよせることにした。これは完成品なので、比較的簡単に輸入が出来そうと踏んだ。このコーヒーのサンプルが届く時期に合わせ、5月31日に第3世界ショップの設立を決めた。南北問題に興味のある人にこの日に集まってもらい、味も試して貰い、設立のお披露目をしようと計画した。
月刊Press Alternative1997年6月号
スタッフ物語より抜粋
■アフリカフェが到着
96年5月31日、皆さんに味見をして頂くためにオーダーをしたアフリカフェが、その3日前になっても到着しない。もし当日になっても着かなかったら、とハラハラドキドキの1週間を思い出す。
ぎりぎり間に合った真空パックの「アフリカフェ」は、タンザニア・ニカラグア・モザンビークなど5カ国の豆をブレンドしたコーヒーで、オランダの市民団体からの輸入ものであった。
直前ぎりぎりに着いたこともあって、第3世界ショップのコーヒー「アフリカフェ」が輝いて見えたのは私だけではなかったはず。味見の当日は、思いも寄らず40人以上の人たちが参加、マスコミまで数社入り、期待の大きさを受け止めると同時に、この活動を続けていかなければならない責任を感じる1日になった。
コーヒーの他に、イギリスのOXFAMから紹介された民芸品の生産者へも、商品を注文していた。フィリピン・バングラデシュから無事届いたのが不思議なくらい、お粗末な梱包の荷物が届き始めた。商品だけの関係ではなく、途上国の実情を紹介するとともに、途上国への理解を深めようと、コーヒーの輸入と同時に「コーヒーから世界が見える」という冊子も作成した。もちろん、印刷まですべて手作りである。