型押しした革に1つ1つ手作業で色付けをする山羊革工芸品。使っていくうちに、徐々に革色が美しいあめ色へと変化し、光沢が増してゆくのが特徴です。貴重な革を余すところなく使い、環境にも配慮し作られています。
サンスクリット語で”平和郷”を意味する、インド東部のシャンティニケタン。この地から生まれた山羊革工芸品は「シャンティニケタニ」と呼ばれ、かつてインドの詩人タゴールが日本を訪れた際、革細工に感動し、その技術をインドに持ち帰ったことが始まりといわれています。平和と農民の自立を願うタゴールの志とともに発展した山羊革工芸品は、農民たちの副業として広がり、1970年代のバングラデシュ独立戦争の際は、バングラデシュから逃れてきた多くの難民たちの自立を支える、かけがえのない仕事となりました。現在でも西ベンガル地方の生産者の大切な仕事となっています。
原料の山羊革はインドの南部チェンナイから届きます。チェンナイの水は鉄分が少ないため、山羊革をなめすのに適しているといわれます。革をなめすには、クロムと呼ばれる化学薬品を使う方法と、植物性のタンニンで なめす方法があり、第3世界ショップの山羊革工芸品は、植物性のタンニンでなめし加工をしています。
タンニンなめしは、樹木や植物などから抽出した天然の渋を利用して革をなめす製法です。植物性のタンニンでなめされた山羊革は色が白いのが特徴で、「ホワイトレザー」ともいわれています。染料の吸収が良く使うたびに艶がでて手に馴染み、あめ色へと変化してゆき、革本来の自然な風合いを楽しめるのも特徴です。廃棄後、有害物質を発生せずに、土で分解されるので、環境に負荷をかけない素材とされています。
山羊革工芸品に施される柄は、亜鉛板で作った版を万力という機械を使って革に型押しし、その後手作業で色を染めていきます。型押しの絵柄を縁取る白い部分は革本来の色を使っており、色を塗らない革本来の色を見ることができるのも山羊革工芸品の魅力のひとつです。
色塗りは布をクルクルと丸めただけの手作りの筆に染料を染み込ませ、1つ1つ丁寧に、手作業で色をつけていきます。細かい部分を色付けするのは、とても根気のいる作業です。着色には発がん性の疑いのある成分を含まないアゾフリー化学染料を使用しています。
仕上げにローラーで圧力をかけることで、革に含まれる脂分が表に染み出し、エナメルのような独特のツヤとなって輝きが生まれます。