パウリーニョコーヒー生産者

パウリーニョ農園(フェアトレードコーヒー)生産者紹介

フェアトレードコーヒー生産者

ブラジルでコーヒーを栽培するパウリーニョさんは、COEを何度も受賞するほどの高品質のコーヒーを作っています。自然と調和した美しい農園で、有機栽培にこだわり、完熟した実だけをひとつずつ選んで手摘みしています。

コーヒー豆を収穫するパウリーニョさん

ブラジルCOEの常勝者

パウリーニョさんは、大変研究熱心で、常においしいコーヒーを作ることに全力を注いでいます。ブラジルCOE(カップ・オブ・エクセレンス)で、1位をはじめ、過去に何度も上位入賞を果たしています。

COEはコーヒーを輸出する各国で行われるもので、出品された数百の優れたコーヒーからほんのわずかのコーヒーにしか与えられない称号です。当時は有機栽培部門が分かれていなかったため、1位を取ったパウリーニョさんのコーヒーが有機栽培とわかると、世界で初めての快挙に大変な注目が集まりました。

生産者紹介パウリーニョ農園

農園の土をチェックするパウリーニョさん

有機栽培のこだわり

パウリーニョさんは、コーヒーの農薬は刺激が強く毒性があると考えて、従業員の健康を守るためにも、従来農薬を使わない栽培方法を実践していました。

一方、コーヒー栽培の他に小規模農家の農業指導という仕事を長年している中、重い臓器の病気にかかり、10年間は治療が必要と医者に言われました。農家との仕事でたくさんの農薬を吸い込んでいたので、そこから健康を害したのではと思い当たり、自分の農園では2000年に農薬も化学肥料も使わない有機栽培に切り替えました。

農園内に広い堆肥場があり、大量の自家製堆肥を作っています。牛やブタなどの家畜の糞や、コーヒーの果肉、牧草の固い部分など、材料はすべて農園内にあるものを使用しています。

パウリーニョさんが、自慢の土をグワッとすくって見せてくれました。ふかふかで軟らかく、フレッシュな清々しい匂いがします。細かい木の根がもじゃもじゃと勢いよく生えているのが見えました。これが有機栽培の証しです。

自然と調和した農園の風景

環境と調和した美しい農園

自然の起伏を生かした農園は、森や泉が点在し、牛・ブタ・鶏の牧場もあります。トゥーカンやジャクーといった大きな鳥、アライグマなどたくさんの動物を見かけます。

作業の合間に休憩をする木造の小屋があり、そこでパウリーニョさんが自分の作ったコーヒーを淹れてくれました。お供は奥様が作ってくれたポビーリョ(ポンジケージョをちょっと大きくしたようなパン)とお手製のジャム。

休憩所の窓からは、深い緑色の葉をつけたコーヒーの木々、牧場で草を食む牛、牧草からこぼれ落ちた種を摘む鶏、目に涼しさを運ぶ泉…。風や木々の擦れる音しかしない静寂な景色の中、時折小鳥のさえずりが大きく響きます。それは、パウリーニョさんが休憩所の窓際に、飼料のおこぼれをまいた小鳥用の餌場を設けているから。

「農園では何ひとつ捨てるものはないよ」という、パウリーニョさんの命に対する深い愛を感じました。

手摘みで収穫したコーヒーの実

完熟した実だけを選んで手摘み

ブラジルの一般的な大規模コーヒー農園では、効率を重視してコーヒーの木を規則正しく列に植え、化学肥料や灌漑施設の力を借りて開花時期をそろえ、タイミングを合わせて熟した実を一斉に機械で収穫します。

一方パウリーニョ農園では、すべて手摘み。枝についている実をしごくように一度に収穫してしまう「ストリップ」という方法ではなく、完熟した実だけをひとつひとつ選んで収穫する、手間も技術も必要な「ピックアップ」という方法です。

一枝に未熟、完熟、過熟と熟度の異なる実がなっているため、ピックアップ法では4月から8月の収穫シーズン中、何度も同じ圃場に入って手作業で収穫作業をする必要があります。圃場は自然の起伏に富み、ところどころにシェードツリーがあるため、機械が圃場に入れません。

真っ赤に熟したコーヒーの実

ハニーコーヒー

完全に熟したコーヒーの実は、鮮やかな赤色というより、黒みがかってきます。その実を口に入れて、果肉はペッと出して粘着質の残った中の種をしゃぶると、これが甘くておいしい!完熟した実はしっかりとした甘みがあり、それがコーヒーに深いコクを与えます。

果肉を剥いた種(コーヒー豆)は、この甘味のある粘着質を残したまま1週間ほどかけてゆっくりと天日乾燥させます。

コーヒー豆を乾燥させるアフリカンベッド

水分が多い内は、コンクリートのテラスに豆を広げます。乾燥具合によって、山のように盛ったり、そこから花の形のように崩したり、手間のかかる作業です。豆の状態により、アフリカンベッドと呼ばれる高床式のネットの上に豆を広げ、さらに均一に乾燥させます。

このハニープロセス(パルプドナチュラルとも呼ばれます)によって、果肉の甘味が豆に移り、際立ったコクのある味わいのハニーコーヒーになります。

シェードツリーとパウリーニョさんお気に入りの岩場(左:訪問時のスタッフ)

変わり者の日陰栽培

ブラジルでは伝統的に日陰栽培というのはほとんど見かけません。たとえ有機栽培だとしても、農園の周囲に木々があり、少しの日陰を作っている程度。しかし、パウリーニョさんは、2005年から農園の一角に1本1本背の高くなる木を「シェードツリー」として自分で植え、一部日陰栽培の環境を作りました。

「最近は気候がおかしい。年々暑くなりコーヒーの実が早く熟してしまう。何事もゆっくり、コーヒーの実も徐々に熟していくとおいしいコーヒーになる」。こんなことをする人は他にいないので、周りからは当時“ロコ(変わり者)”と言われたそうですが、温暖化対策として始めた日陰栽培は、現在十分に良い結果が出ています。

パウリーニョさんが手招きするので、崖に突き出た岩場に2人で座りました。そこからは、パウリーニョさんが植えたシェードツリーが高く成長して、適度な日陰を作っている美しい農園風景全体が見渡せました。ここがパウリーニョさんの一番のお気に入りの場所だそうです。

番外編:パウリーニョさんの素顔

農園内で肉牛、乳牛、豚などを飼育しているパウリーニョさん一家は、街中でお肉屋さんも営んでいます。この地域の名物であるトヘズモ(豚肉皮のから揚げ)を発明したのは、パウリーニョさんのお母さん。広場に面したお肉屋さんを仕切るのは奥様で、パウリーニョさんは牛乳配達をしています。