パラライ紅茶生産者

フェアトレード紅茶の生産者

インドの紅茶生産者パラライ農園は、“動植物との共生”という考え方を重んじ、自然環境を大切にしながら、有機栽培の紅茶作りに取り組んでいます。

ユネスコの世界遺産に登録された山脈の中にある、自然豊かで美しいパラライ農園。

自然を尊重する農園

パラライ農園は、南インド最南端のタミル・ナードゥ州に位置しています。パラライとは、“岩の上”という意味。農園は、空港から車で山奥に向かうこと約3時間、トラ保護区を通過してさらに上へと登っていき、ヘアピンベンドと呼ばれるいくつもの急カーブを登った山の上にあります。

農園がある場所を含む西ガーツ山脈は、ユネスコの世界遺産に登録されており、世界的に絶滅が危惧されている植物相、動物相、鳥類、両生類、爬虫類、魚類が少なくとも325種生息していると言われています。

そのためか、急カーブごとに絶滅危惧種に指定された貴重な生物の看板が掲げられ、1つ目にはオオサイチョウという鳥、最後のカーブにはシシオザルというサルなど、カーブを曲がるたびに絶滅危惧種に関する知識も深まってゆきます。

絶滅危惧種であるシシオザルの看板。顏周りのふさふさ毛がライオンぽくてキュート。

これらの動植物を守るため、パラライ農園では様々な活動を行っています。例えば、農園周辺の森の中に落ちている在来種の種を拾って集め、有機的な方法で育て大きくして森に戻す活動をしています。その数は、1年間で約180もの異なる種を育て、約4,600本も森に植えたそうです。

農園周辺には、サル、クジャク、イノシシ、シカ、ウシ等の様々な動物が生息しています。時には農園内にゾウ、ヒョウ、熊などの危険動物が出没することもあるそうです。そういう動物が接近してきた場合には、機械で感知してアラームが鳴るようになっていて、接近してきたら、クラッカーや火などで動物を驚かして、人間と距離をとるようにして、お互いを殺したり殺されたりしないようにしています。

パラライ農園では、“共生”という考え方を重んじ、“人間は動物たちが住んでいる森に住まわせてもらっている”という意識を持って暮らしています。農園内には動物自然保護センターが設けられ、どんな動物・生物・植物が生息しているかをかわいいイラスト入りで展示しています。

農園周辺の森に落ちている在来種の種を拾って育て戻すことで、森の生物多様性を保全しています。

自然の力を最大限に活かした農法

有機栽培に取り組むパラライ農園では、森のあらゆる生物に対してのリスペクトの気持ちを持ち、自然を支配するのではなく自然の力を借りて、自然環境に配慮したお茶づくりを行っています。

お茶の木を育む土づくりには、農園内の葉っぱと牛糞を三層に重ねてその上にミミズを入れて作った自家製の堆肥を使い、アカウキクサという水生シダを育てそれを元に天然肥料を作り、土に撒いています。

また、農園内にR&Dと呼ばれる研究開発機関を設け、農薬に頼らないエコフレンドリーな方法で害虫駆除や病気対策を行っています。例えば、害虫対策として、害虫を捕食する益虫を卵から育て、1匹ずつ丁寧に容器に入れて孵化させて幼虫にして、自然環境の中で生きていけるように森の疑似環境を作ってそこで慣れさせた後に農園に放っています。その数なんと年間35万匹!気の遠くなるような地道な作業です。

その他にも、害虫が嫌う匂いを持ったハーブから抽出液を作り、その匂いを活用して害虫を防いだり、バクテリアの力を利用してカビの発生を防いだりしています。

ワーカーたちに無償で提供される住居。心温まる歓迎メッセージで出迎えてくれました。

充実した福利厚生とワーカーの暮らし

パラライ農園では福利厚生が充実しており、住居、病院、託児所、集会所などが無償で提供されています。

農園内に居住区があり、農園で働くワーカーたちはみなこの居住区に住んでいます。居住区を訪問した際に、米粉と天然由来の成分で着色して作ったチョークで「WELCOME」と地面に書いていて歓迎してくれました。

居住区内でお宅訪問をさせていただいた、パラライ農園での茶摘み歴30年になるベテランのラジェッシュワリさんのお家は、黄色い壁紙に、様々な装飾物が飾られていてとってもカラフル!キッチンも清潔に整えられていて、広々としていて使いやすそうでした。「茶摘みの仕事が楽しく、仕事でつらいことは何もない。休みの日に孫たちと遊ぶことが楽しみ」と語ってくれました。

家族の写真がたくさん飾られた、インドらしくカラフルでかわいいワーカーの家。

農園内には、ICU、検査室、レントゲン室、手術室、産科病棟、理学療法室などを備えた本格的な病院があり、医療費は薬代も含めてすべて無料です。お医者さんは女医のスマシーさん。外科、内科、ありとあらゆる病気やケガに対応しています。熱、風邪、ケガなどの薬の利用が多いそうですが、茶摘みという仕事柄、背中や肩や足の痛みを訴える患者さんが多く、体の痛みを訴える患者さん向けに理学療法室での治療も行われています。

無償の託児所も設けられ、ワーカーの子どもたちはそこで日中を過ごし、手作りのランチの提供や、予防接種の記録や成長曲線などの管理もなされています。子どもたちの胃腸の調子がわるい時や熱がある際には、託児所内で育てているハーブを採って与えるなど、植物療法による健康管理もしています。ごみの分別の表も壁に貼っていて、コンポストに使えるもの、そうでないものを分けるように指導しています。

託児所で開かれていた子供の日パーティーの様子。

訪問した日はちょうどインドの子どもの日でお祝いのパーティが行われており、ドレスアップした子どもたちによる歌やダンスを見させてもらい、あまりのかわいさに目じりが下がりっぱなしでした。

他にも、フェアトレードのプレミアムで基金が作られ、そこから奨学金や退職金の付与など金銭面のサポートや、長靴、手袋、レインコート、圧力鍋、浄水器、保温ポットなどワーカーの生活に役立つものの現物支給が行われています。

茶摘みをするパラライ農園のワーカー

茶摘みの様子

農園での仕事時間は8時~17時で、12時~13時は昼食休憩となっています。大きなザルのようなものにハサミが付いた器具で、“チップ”と呼ばれる茶木の先端にある開いていない芯芽と、チップの下の上から3枚目の柔らかい葉までを収穫します。

摘み取って良い茶葉の目安が分かりやすいように、茶畑の上に細い棒を載せて、棒から飛び出した上の葉をカットするようにしています。ワーカーたちは、楽しそうにおしゃべりしながらも、頭からぶら下げている収穫袋に次々と収穫した葉を入れていきます。収穫する量は、1人当たり1日に25~30キロほどです。

収穫した茶葉の袋を頭にのせたワーカーたち

収穫した茶葉は頭に載せて集積場まで運び、1袋ずつ計量してもらいます。誰が何キロ摘んだかを記録しており、摘んだ量によりもらえるお給料も変わるため、それが茶摘みのモチベーションにもなっているそうです。

ワーカーたちは、はじめはみんな少しシャイでハニカミ笑顔という感じでしたが、慣れてくると自らカメラに明るく笑いかけてくれるようになり、歓迎の歌を振り付きで歌ってくれるワーカーまでいました。皆さん茶摘みの仕事に慣れていて、明るく元気に茶摘みを楽しんでいました。