手漉き紙製品を作る生産者団体シャピィと、新たに「ガッツィ紙シリーズ」を作りました。ガッツィ紙は、環境への負荷が少ない原材料で作る耐磨耗性の手漉き紙です。布のように加工でき、革のような独特の風合いが特長です。
フィリピン ミンダナオ島に生息する植物から手漉き紙を作る生産者団体シャピィと、新たにガッツィ紙シリーズを作りました。
「ガッツィ」とは勇敢、強靭、勇気、冒険などを意味する英語で、シャピイの新たな冒険にふさわしい丈夫な紙素材という意味を込めて、「ガッツイ紙」と名づけました。シャピィは現在、手漉き紙に押し花を装飾するカード・レターだけでなく、ガッツィ紙を使った新しい商品づくりに挑戦しています。
ガッツィ紙は、木以外の原材料、アバカ繊維、サラゴ、そしてコゴン草など、環境への負荷が少ない原材料で作られた、 草や絹のような強い、耐磨耗性の手漉き紙です。 プリントも可能で、革のような独特の風合いが特長です。
紙というと、日本人にはなじみ深い折り紙の文化があります。ガッツィ紙開発の際、日本とフィリピンの「競創」をテーマに掲げ、フィリピンの手漉き紙製品に折り紙という和風デザインを取り入れるおもしろみを形にしました。折り紙の封筒に着想を得て作ったペンケースなど、製品の中にその要素を見つけることができます。
ガッツィ紙作りは、すべてが初めて。製品になりうる耐性の素材を完成させる素材作りはもちろん、ミシンによる縫製などこれまでなかった立体造形の要素、部品の選び方・付け方も、あらゆることが手探りです。ミニポシェットに使われている紐は、良い素材がなかなか身近に見つからず、ニットデザイナーの三園さんから手編み紐の作り方を教わり、シャピイで手作りし、手になじむ、柔らかな紐になりました。
知恵を出しあい、協力しあって、ようやくみなさまにご紹介できることとなりました。
1987年、フィリピン ミンダナオ島。産業に乏しいこの村では若者が仕事を求め都会へ流れて行く状況を何とかしようと、シャピイの創業者であるロレッタさんは、成長が早くかつて「農民の敵」と呼ばれたコゴンという雑草を原料に手漉き紙作りを始めました。5人で始めた手漉き紙作りは、現在は多い時で400人ほどの人たちに仕事を提供するまでに成長しました。30年以上に渡り手漉き紙を作り続けてきた職人たちが、ひとつひとつ手作業で作っています。
現在ロレッタさんからシャピィを引き継いだ息子のニールさんは、両輪駆動で農業や教育にも力を入れつつ、手漉き紙でもカード・レター以外の商品作りにチャレンジしなければならないと感じていました。そこで手漉き紙の可能性をさらに広げ、次世代を育成するべく、次なる商品開発に乗り出しました。それが、布のように加工できる紙素材を使った製品でした。
当初、新たな紙素材の開発にはなかなか内部の賛同を得られず、質を上げたりプリントを施したりとこの素材に挑戦はするものの、製品として完成を目指すのは難しかったのですが、CWB(※1)と交流を重ね、ニールさんの「新事業応援」として本格的に協力体制ができたことで、具体的な商品開発へ進むこととなりました。
商品デザインは、ニットデザイナー 三園麻絵さんの協力がありました。三園さんはCWBメンバーとしてシャピィを訪問しており、ガッツィ紙開発の際も、自身の持つデザイン力や技術で協力したい、商品化への協力によって社会貢献になればと声をあげてくれました。
CWBとの交流のなかで、「未来へ向けてどう生き残っていくか」という私たち共通の課題、すなわち地域に産業を興して雇用を生むこと、ただ単にモノを作るのではなく、そうした意味合いを含んで継続していく大切さをニールさんは意識しています。シャピィは新たな風を伴って、歩み続けています。
※1 第3世界ショップでは、国境を越えてコミュニティを繋げ、ともに競創する仲間を各国へ広げてきました。そのネットワークをCWB(Community network Without Border)と名付け、国境を越えて課題解決に前向きに取り組む人々のネットワークとして活動し、 世界10か国での展開を目指しています。